参考文献・凡例

唐棧織を紹介する書籍・雑誌
唐棧織を紹介する書籍・雑誌

参考文献

  • 浦野理一『唐棧』 文化出版局 1972年。
  • 中江克己編『縞・唐棧 限りない美を生む粋な織物』 日本の染色9 泰流社 1976年。
  • 千葉県立安房博物館『第三回房総の伝統工芸品展 唐棧織展』 1976年。
  • 宮本常一・高松圭吉・米山俊直監修『織りと染めもの』 日本人の生活と文化8 日本観光文化研究所 1982年。
  • 岡村吉右衛門『館山唐棧』 衣料生活研究会 1987年。
  • 吉見逸朗『大地の染織』 繊研新聞社 2008年。

凡例

  • 本書は、館山市・館山市教育委員会が開催する、平成22年度館山市立博物館企画展「唐棧織の世界-舶来の伝統工芸品-」(会期:平成22年7月3日(土)~9月12日(日))の展示図録です。
  • 本書に掲載されていても、資料が展示されていない場合があります。
  • 本展の開催および本書の作成にあたっては、齊藤裕司氏に多大なる御協力・御助言を賜りました。深く謝意を表します。
  • 本書の企画および本書の編集執筆は、館長 栗原誠・分館長 福原宣之の指導のもと、学芸員 池田英真が担当しました。

唐棧織の小事典

●筬(おさ)
 機織(はたおり)の部品。経糸(たていと)を通して一定の幅にそろえておくのと同時に、経糸の位置を整えて緯糸(よこいと)を織り込むのを都合よくする道具です。

●川越唐棧(かわごえとうざん)
 略して川唐(かわとう)といいます。江戸時代の終わり頃、横浜で買った糸で舶来品の唐棧織を模して織り、川越唐棧と呼んだのが始まりといわれています。

●砧(きぬた)
 布を柔らかくしたり、つやを出したりするのに用いる木槌(きづち)と石の台です。

●棧留(さんとめ)
 棧留縞(さんとめじま)のこと。インドのサントーメから渡来した縞織物(しまおりもの)を棧留と呼びました。

●縞割り(しまわり)
 整経(せいけい)するときに織り出す縞柄に応じて、色糸を必要な糸数ごとに配列するための設計図です。

●整経(せいけい)
 機(はた)にかける前に、経糸を一定の長さと本数に整える作業です。

●綜絖(そうこう)
 機織の付属具。経糸を上下に開きわける働きをします。杼(ひ)の通り道をあける道具です。

●高機(たかばた)
 織機(おりき)の一つ。経糸が機に固定されているため、体を前後に動かして糸の張りを調節する必要がありません。

●経糸(たていと)
 織物の長さの方向の糸で、織機にあらかじめ張っておきます。そこへ直角に緯糸を組合せ、布を織っていきます。

●杼(ひ)
 木製で船の形をしている織機の付属具の一つで、中に緯糸を巻いた管(くだ)を入れて緯糸を通します。

●木綿(もめん)
 綿の原産地はインドやエジプトなどで、日本には平安時代に伝えられました。日本では三河木綿(みかわもめん)が有名です。唐棧織では主にエジプト綿や米綿(べいめん)、インド綿を使用します。

●緯糸(よこいと)
 織物の巾(はば)の方に織り込む糸。

 3.着物

着物(齊藤頴作「天正{てんしょう}」)
着物(齊藤頴作「天正(てんしょう)」)
着物(齊藤裕司作)
着物(齊藤裕司作)
着物(齊藤裕司作「乱立(らんたつ)」)
着物(齊藤裕司作「乱立(らんたつ)」)
着物(齊藤頴作「大鰹{おおがつを}」)
着物(齊藤頴作「大鰹(おおがつを)」)
着物(齊藤裕司作「算崩し(よみくずし)」)
着物(齊藤裕司作「算崩し(よみくずし)」)
着物(齊藤豊吉作「紅唐紅梅(べにとうこうばい)」
着物(齊藤豊吉作「紅唐紅梅(べにとうこうばい)」

 2.小物

左上から時計回りに
札入れ(齊藤頴・光司作)
免許証入れ(齊藤光司作)
名刺入れ(齊藤光司作)
巾着(齊藤頴作)
がまぐち(齊藤頴作)

左:マフラー(齊藤裕司作)
中:マフラー(齊藤裕司作)
右:風呂敷(齊藤裕司作)

唐棧織と房州うちわのコラボレーション (齊藤光司作)

唐棧織と房州うちわのコラボレーション
(齊藤光司作)

【4】唐棧織の世界
 1.反物

 唐棧織は、反物や着物のほかにも様々なものが作られています。財布や名刺入れなどの粋な小物も人気です。

左:着尺(きじゃく)反物
(齊藤頴作「紅唐紅梅(べにとうこうばい)」)
右:着尺反物
(齊藤光司作「藍挟み胡麻(あいばさみごま)」)

左:座布団用反物
(齊藤光司作)
中:広巾(ひろはば)反物
(齊藤光司作「オランダ」)
右:広巾反物
(齊藤光司作「茶紺(ちゃこん)」)

左:着尺反物
(齊藤裕司作)
中:着尺反物
(齊藤裕司作「紅葉(もみじ)」
右:着尺反物
(齊藤裕司作)

【3】唐棧織の柄を楽しむ
 名のある柄

 唐棧織の柄には名前があるものとないものがあります。伝統的な柄をもとに、工夫を凝らした様々な柄が生まれました。「鰹(かつを)」は、鰹の背中からおなかにかけての色に似ていることから、この名前で呼ばれています。

鰹(かつを)
鰹(かつを)
赤無し鰹
赤無し鰹(あかなしがつを)
胡麻
胡麻(ごま)
紅葉
紅葉(もみじ)
大鰹(おおがつを)
大鰹(おおがつを)
七々子鰹{ななこがつを}
七々子鰹(ななこがつを)
赤挟み胡麻
赤挟み胡麻(あかばさみごま)
紺地西川
紺地西川(こんじにしかわ)
紺地鰹(こんじがつを)
紺地鰹(こんじがつを)
七々子大鰹(ななこおおがつを)
七々子大鰹(ななこおおがつを)
藍挟み胡麻
藍挟み胡麻(あいばさみごま)
浅葱西川
浅葱西川(あさぎにしかわ)

 「七々子(ななこ)」は柄ではなく、糸を2本ずつそろえた織り方のことです。 「乱立(らんたつ)」は乱立という名のお坊さんが着ていた衣の柄から、こう呼ばれています。

乱立
乱立(らんたつ)
乱立崩し(らんたつくずし)
茶紺(ちゃこん)
三筋(みすじ)
大乱立(おおらんたつ)
水田(みずた)
万両(まんりょう)
文化(ぶんか)
七々子乱立(ななこらんたつ)
赤水田(あかみずた)
清元(きよもと)
オランダ

 「真田(さなだ)」や「黄紅梅(きこうばい)」など、齊藤家独自の柄の呼び方もあります。「五十鈴(いすず)」は2代豊吉氏が作った着物を、女優の山田五十鈴が着たことからこう呼ぶようになりました。

紅唐(べにとう)
天正(てんしょう)
滝縞(たきしま)
金通し(きんとおし)
紅唐紅梅(べにとうこうばい)
目光(めひかり)
棒縞(ぼうじま)
野毛
野毛(のげ)
黄紅梅(きこうばい)
大名(だいみょう)
五十鈴(いすず)
真田(さなだ)

 染料の種類

藍


原料の植物はタデ科の植物です。染具合によってそれぞれの色に名前がつけられています。

(左から)1.甕(かめ)のぞき 2.水浅葱(みずあさぎ) 3.浅葱(あさぎ) 4.お納戸(なんど) 5.紺(こん) 6.上紺(じょうこん)

藍甕(あいがめ)
藍甕(あいがめ)
山桃の皮(渋木)

山桃の皮(渋木)
日本の南西部から東南アジアに分布する山桃の木の皮を乾燥させたもの。

榛{はん}の実(矢車)

榛(はん)の実(矢車)
日本各地に分布する榛の木の実が、まだ緑色のうちにとって利用する。

五倍子{ごばいし}

五倍子(ごばいし)
アブラムシがヌルデの葉に傷を付け、コブになったところを乾燥させたもの。

檳榔樹{びんろうじゅ}

檳榔樹(びんろうじゅ)
インド、マレーシア原産のヤシの一種。黒色の染料として利用される。

カテキュー

カテキュー
アカシア属の植物の心材を煮詰めて作った固形エキス。

ゲレップ

ゲレップ
ブラジル・メキシコ・西インド諸島などに生育するクワ科の木。

【2】唐棧織のできるまで

1.精錬(せいれん)

 染めやすくするために、木綿糸を沸騰させたお湯の中で煮て、油分や汚れを落とします。汚れを落とすのに、およそ20分かかります。

精錬前
精錬前
精錬後
精錬後
精錬
精錬

2.糸を染める

 植物の皮や実などを煎じてつくられた植物染料で糸を染めます。染料を舐めて、その渋さで仕上がりの色をイメージします。渋いほど色は濃く、ほんのりとした渋さや甘さのときは薄い色になります。味覚が大切なので、酒やタバコ、刺激物は厳禁です。染料をまんべんなく染み込ませた糸を絞り、さらに手のひらの上で軽く揉みます。
 次に媒染剤(ばいせんざい)に入れます。染料と媒染剤に繰り返し入れることで色が濃くなります。

染める
染める
兜鉢{かぶとばち}
兜鉢(かぶとばち)

3.糸を干す

 染め上がった糸は色別に竹竿に吊るし、半日ほど天日干しにします。

糸を干す
糸を干す

4.糸巻き

 染めて乾燥させた糸は、かせかけ・座繰(ざぐ)りを使って小枠(こわく)に巻いていきます。

かせかけ・座繰り・小枠
かせかけ・座繰り・小枠
糸巻き
糸巻き

5.整経(せいけい)

 一反の生地に用いる経糸(たていと)の本数を合わせて巾(はば)や長さを整えることを整経といいます。のりづけされた経糸を縞柄に合わせて数えて取り、紙縒(こよ)りで結んでまとめた上で整経し、くさり編みにしてまとめておきます。

整経
整経

6.綜絖通し(そうこうどおし)

 経糸を縞柄のとおり一本一本綜絖に通します。綜絖とは、経糸の間に緯糸(よこいと)を織りいれるために、経糸を上下に動かすための機織の装置のことです。とても根気のいる仕事です。

綜絖通し
綜絖通し
綜絖
綜絖

7.筬通し(おさどおし)

 綜絖に通した経糸を筬(おさ)に通します。筬とは、機織の装置で、経糸がもつれないように整え、経糸に通した緯糸を打ち込んで、引き締める役割を果たします。

筬通し
筬通し
筬

8.機織(はたおり)

 高機(たかばた)とよばれる機(はた)に糸をかけ、織っていきます。緯糸がしっかり打ち込めるので、むらのない、丈夫な生地を織ることができます。
 管車(くだぐるま)で管(くだ)に緯糸を巻き、その管を中に入れた杼(ひ)(シャトル)が左右に勢いよく走り、緯糸が打ち込まれていきます。
 経糸をずらしながら織り進め、織りあがった布は手前の棒に巻いていきます。

杼・管
杼・管
機織
機織
管車
管車
高機
高機

9.湯通し(ゆどおし)

織りあがった布は、のりを落とすためにぬるま湯に通されます。湯通しされた反物は、広げて干されます。

湯通し
湯通し

10.砧打ち(きぬたうち)

 折りたたんだ反物を平らな石の上に置き、樫の木で作られた木槌(きづち)で、丹念に打ち込みます。木綿が柔らかくなり、織り目が締まって生地につやが出ます。
 最後にぬるま湯に通して余分なつやをとり、反物が完成します。

砧打ち
砧打ち
砧