死後の一連の儀式は旅にでるかのような風習が多くみられます。死者には経帷子(きょうかたびら)・頭陀袋(ずだぶくろ)・手甲(てこう)・脚絆(きゃはん)・足袋(たび)といった衣装を着せ、棺には三途(さんず)の川の渡し賃である六文銭や草鞋(わらじ)や金剛杖を入れます。まさにあの世への旅立ちの準備といえるでしょう。
約40年前まで行われていた葬送行列は「野辺(のべ)送り」と言い、鉦(かね)を叩き、旗や花を持ち、輿(こし)を担ぎ、写真や位牌を持つ数十人の人々から成る葬送行列です。墓地へと向かう行列ですが、この世からあの世へと死者を送る儀式と考えられていました。
こういった昔の葬儀は、村の中にある台、組、講などの組織が手伝って行われました。大正時代の記録には、今では見られない喪服や門牌(もんぱい)、花篭といった風習について書かれています。大正14年(1925)に高山恒三郎によって書かれた記録と、昭和初期から中期にかけて撮影された葬儀の写真を中心に、かつて安房地方で行われていた葬儀の様子をご紹介します。また、お寺やお堂に残された輿や鉦など葬儀に関連する道具をご紹介します。
11.叩き鉦(たたきがね)・鐘木(しゅもく)
明治18年 当館蔵
25.輿
昭和40年(1965)頃 当館蔵