垂下した左手に水瓶を持し、右手はひじをまげて右脇高く挙げ、払子(ほっす)を持する十一面観音像で、頂上の阿陀の下に、上段に5、その下に5つの化仏を配し、冠の両脇に結紐をつくり両肩に垂下させています。天衣は、軟らかいカーブでなびくように表現され、体躯のひねりのムーブマンと対応して軽快な感じを与えています。腰裳は、脚にまといつくように処理され、裳先はくるぶしあたりで左右にたなびかせています。纓絡は胸にかかり、左肩から右ひざにかけて垂下させる特異な処理をしているのが目につきます。像の背面は扁平ですが、大まかな表現があります。像全体のモデリングは細身ですが、腰をひねり、上体を右に向け、再び首の位置で頭部をまっすぐにもどし、手の配置と天衣の表現で全体にバランスを与えている造形処理は上手と言えます。
渡来仏のも模古作かと考えられますが、鋳造年代などについては不明です。
当像は、下立松原神社に伝来したもので、他の兜跋毘沙門天、毘沙門天坐像、毘沙門天立像などの懸仏と一緒に社殿内より確認されました。