ごあいさつ

 江戸時代中期以降、館山に陣屋を置いた大名がいました。藩主である稲葉家は、3代将軍家光の乳母として有名な春日局とその夫である稲葉正成の子孫にあたる一族です。天明元年(1781)に入封した正明を初代藩主とし、5代正善のときに明治を迎えました。安房・上総・下総3か国の領地を合わせて1万石の小藩でしたが、4代正巳は若年寄や老中格、海軍総裁など幕府の要職に就いています。

 市内では館山・豊房・神戸地区などの一部を領地とし、藩士たちによって年貢諸税の徴収や各種取締りが行われました。その一方、藩士のなかには地元の村から登用された者もおり、俳諧や学問を通じて藩士と地域の人々が交流する機会もありました。現在伝わる藩士関係の資料には、書画や儒学、医学などの学問や文化に関するものも多く、支配者としてだけでない多様な武士の姿をうかがうことができます。

 今回の展覧会では、これまで整理されてこなかった館山藩の歴史について、基礎的な事実をできる限り明らかにするとともに、そこに生きてきた藩士たちの姿や、地域と関わりを紹介します。

最後になりましたが、本展覧会の開催にあたり、多くの方々よりさまざまな情報をいただき、また貴重な資料をご出品いただきました。ご協力いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。

平成28年2月6日
館山市立博物館