市内館山にあった川名写真館は、大正2年(1913)に川名竹松氏が創業し、3代にわたって営業を続けました。地域の写真家として住民たちの入学・卒業や結婚、葬儀、祭礼などの行事を多数撮影したほか、昭和初期には館山海軍航空隊や農林省水産講習所(現東京海洋大学)のカメラマンを務めています。また、絵はがきを発行していたことから、名所や寺社などの風景や関東大震災の被災状況など、当時の景観を伝える写真も数多く撮影しています。大正時代に安房で活動した写真愛好会に関する資料もあり、地域の写真文化を支えた人物であったことが分かります。
本展覧会では、当館にご寄贈いただいた川名写真館関係資料を中心に、近代安房の風景と写真文化を紹介します。懐かしい風景や人々の姿を知り、地域の移り変わりについて考える機会となれば幸いです。
最後になりましたが、貴重な資料をご寄贈いただいた川名俊明様をはじめ、ご協力いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。
令和4年2月5日
館山市立博物館
館長 船水 裕康