唐棧織は、近世初頭にオランダ人によってインド・サントーメから日本に輸入された木綿縞織で、粋な織物としてもてはやされました。
明治初頭に東京の蔵前に設けられた旧武士のための授産所で、初代の齊藤茂助氏が当時唐棧の生産地であった川越の職人から伝習して、この技術が館山に伝えられました。その技術を子の豊吉氏が受け継ぎ、孫の頴氏・光司氏兄弟が伝承しました。現在は裕司氏が4代目として唐棧織の制作に励んでいます。
唐棧織は渋みのある縦縞が特徴の綿織物で、細い木綿糸を用います。植物染料で糸を染めることにより美しい色調を出し、高機によって平織りにした後、砧打ちを行うことで独特の光沢としなやかさを生み出します。
本展覧会では、平成21年(2009)3月17日に千葉県の無形文化財に指定された齊藤裕司氏の作品を中心に、齊藤家が代々愛用してきた資料や道具類も併せて紹介し、伝統的な館山の唐棧織を理解していただく機会となれば幸いです。
平成22年7月3日
館山市教育委員会
教育長 石井達郎