ごあいさつ

 江戸に幕府が開かれ、多くの人が暮らす大都市に成長すると、海路でつながる房州は江戸と密接な関わりを持つようになります。

 房州の人々は、海に囲まれた立地を活かし、江戸(東京)への海上交通の重要な担い手となると同時に、「食」の面では江戸(東京)への魚介類の供給地としての役割を果たしてきました。房州の眺望の良さは、観光地としての発展に、房総半島の地形から海防の拠点にと、海を通して房州は多様な顔を持つようになりました。

 本展覧会では、江戸時代から明治時代に、館山を中心とする房州と大都市江戸・東京がどのように関わってきたのかを、人・物の動きや文化活動に注目して紹介します。

 現在、房州に暮らす私たちは、東京をはじめさまざまな地域と交流しています。その関係は一方向的なものではなく、まさに双方向的なやりとりの中から新しい文化を生み出していると言ってもよいでしょう。今回の展覧会を通して、過去の時代に、商品流通や観光、教育、信仰、文化など、海を行き交う人々の双方向の交流から生み出されたものを資料を通して感じ取っていただければ幸いです。

 最後になりましたが、本展覧会の開催にあたり、多くの方々よりさまざまな情報をいただき、また貴重な資料をご出品いただきました。ご協力いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。

平成31年2月2日
館山市立博物館 館長 溝江 晃