1 福原家と松岡村

福原有信は、嘉永元年(1848)4月8日に安房国安房郡松岡村(現館山市竜岡)に生まれました。福原家は、戦国時代に安房国(千葉県南部)を支配した里見氏の家臣の家柄と伝えられ、代々、松岡村の名主を務めてました。有信の父、市左衛門(有琳)も名主であり、祖父の有斎は名主と医者を兼ねていました。また、母の伊佐は、里見氏の一族を祖先に持つ安房郡明石村(現南房総市明石)の豊岡家の出身です。

松岡村は、江戸時代後期の家数23軒、村高138石という小規模な村でした。ここで生まれた有信は、医者である祖父や漢学を好んだ父の影響を受けて成長します。

松岡村には、かつて正見院(しょうけんいん)という真言宗の寺院があり、そこが福原家の菩提寺でした。正見院跡地の隣に建つ八幡宮には、江戸時代に社殿や鳥居を建立・再建した際の棟札(むなふだ)が伝わっており、発願主として福原家の名を見ることができます。その後、明治42年(1909)には、菩提寺を館山市大神宮の遍智院(へんちいん)(小塚大師)に移しています。

松岡八幡宮と正見院跡
松岡八幡宮と正見院跡
房州小塚大師絵葉書
昭和5年(1930) 館山市立博物館所蔵