房総半島南端の安房地域は、古代から海を介してさまざまな地域と交流をしてきました。特に、鎌倉が政治・文化の中心となった鎌倉時代以降は、鎌倉と安房の寺社との間で、人やモノの交流が活発に行われました。
館山平野には、かつて北条得宗家に関係する寺院が存在し、安房の各地には、鎌倉との結びつきを物語る様々な文化財が伝えられています。また、安房地域には鎌倉の寺社領が存在し、これらに重なるように数多くの「やぐら」が分布しています。鎌倉において、中世の有力武士や僧侶の墓とされてきたやぐらが、房総半島にも見られることは、東京湾をはさんだ房総半島南部が鎌倉文化と密接な関係にあったことを物語っています。
平成23年「武家の古都・鎌倉」がユネスコ世界文化遺産に推薦され、鎌倉文化についての関心が高まっています。“渚の駅”たてやまのオープンを記念した今回の展覧会により、中世の鎌倉(三浦半島)と安房(房総半島)の交流を仏教文化から探り、海を通した地域間交流が中世、そして現在の館山にとって、ともに重要であることを知っていただく機会となれば幸いです。
最後になりましたが、本展覧会にご協力いただきました方々に、厚く御礼申し上げます。
平成24年3月3日
館山市立博物館
館長 小山 真