第3章 鎌倉と安房の仏教文化交流

 館山市出野尾にある小網寺には、鎌倉と安房との交流を物語る貴重な文化財が伝えられています。

 ひとつは、「金澤審海」の銘が刻まれている密教法具です。この審海とは、文永4年(1267)、現在の横浜市金沢区にある称名寺の開山に迎えられた僧侶であり、この密教法具は銘文から審海上人ゆかりのものと考えられています。

 もうひとつは、弘安9年(1186)に物部国光が製作した梵鐘です。物部国光は、金沢称名寺や鎌倉円覚寺の梵鐘など、北条氏と関係の深い寺院の梵鐘を製作しています。

 仏像彫刻にも、鎌倉からの影響下で造立されたものが安房に現存しています。鎌倉時代以降、鎌倉を中心に「宋風」というスタイルが流行し、特に鎌倉時代後半、禅宗の導入とともに関東地方に広がりました。その代表として挙げられるのが、法衣垂下像(ほうえすいかぞう)と呼ばれるもので、安房にも優れた作例が遺されています。

称名寺(横浜市金沢区)
称名寺(横浜市金沢区)