東京湾を挟んで鎌倉に接している房総半島には、鎌倉の有力寺社の所領が多数確認されています。これらの寺社は、鎌倉幕府や北条得宗家と関わりが深く、海上交通をおさえるように所領を持ち、そこを通じて房総との交流をしていました。
館山市内には、鎌倉円覚寺や極楽寺の所領が存在したことが確認でき、周辺には中世のやぐらや石造文化財が密集しています。
このように、鎌倉の寺社領はやぐらの密集する地域と重なっていることがわかります。湊を拠点として、北条得宗家と結びついた禅宗や律宗系の寺院が、この地で活動していたことが想定されます。そして、その地域の一画にある萱野遺跡からは、三鱗・花菱文様の瓦が出土しています。この文様の瓦は、鎌倉幕府や北条得宗家と関わりの深かった鶴岡八幡宮や建長寺、極楽寺などの鎌倉寺社に限定して出土するものです。