あいさつ

 江戸時代の初め、新たな漁場を求めて、畿内や紀州の漁師たちが房総半島にやってきました。江戸に幕府が置かれたことにより、そこに暮らす多数の人々の消費をまかなうものとして、房総で獲れる魚が注目されたのです。さらに食材としてだけでなく、鰯は干鰯や〆粕に加工され、田畑の肥料として用いられました。

 この生産地としては、九十九里が全国的に有名ですが、安房でも関西の漁師たちから伝えられた漁法による鰯漁が行われ、干鰯類に加工していました。安房で生産された干鰯は品質が良いとされており、地元で消費されるほか、江戸や浦賀の問屋を通じて各地へも流通しています。また、安房の人々は、他地域で生産された干鰯の海上輸送も担っており、このような形でも流通に関わっていました。

 今回の特別展では、鰯漁や干鰯・〆粕の生産および流通を取り上げ、これまであまり注目されてこなかった安房の干鰯・〆粕について紹介します。また江戸時代の安房の人々の暮らしぶりや、他地域との交流のようすを知っていただく機会となれば幸いです。

 最後になりましたが、本展覧会の開催にあたり、多くの方々よりさまざまな情報をいただき、また貴重な資料をご出品いただきました。ご協力いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。

平成26年2月1日
館山市立博物館
館長 岡田 晃司