「安房の人物シリーズ」は、江戸時代末期から大正時代にかけて、安房という風土に育まれ、安房の文化を担ってきた人々を紹介するシリーズです。1回目は、19世紀の狩野派の画家である川名楽山を紹介します。
川名楽山は天保3年(1832)に、安房郡沼村に生まれ、明治25年(1892)に、61歳で亡くなるまで、数多くの作品をこの安房地方で制作しています。
残されている作品には、花鳥画や肖像画の他、風景画、神仏画などがあり、三月節句や五月節句など年中行事に用いる絵画も描いています。そのほか、内房地区の神社の欄間や天井に「飛天図」や「龍図」が多くあり、外房地区の社寺には絵馬が残されています。
館山市立博物館では、平成元年度より安房郡市全域を対象に、川名楽山関係調査を実施してまいりました。本書はその成果をまとめたものです。広く一般市民の方々が、川名楽山を知る一助となれば幸いです。
なお本書の編集にあたり、多くの方々より様々な情報をいたたき、また所蔵者の方々には調査に快く応じていただきました。心よりお礼を申し上げます。
平成5年2月6日
館山市立博物館長 松田昌久