ごあいさつ

 人々の生活の中には、いつも身近に神や仏の存在を感じ、祈り感謝するという気持ちがあります。神仏に対する信仰は形のないものですが、その祈りや感謝の気持ちを、絵馬という形にして表し、神社やお寺に奉納することがおこなわれました。

 いまも大きな神社や寺院にいくと、受験生の合格祈願を中心に絵馬の奉納がおこなわれています。しかし、身近にあるふるさとの小さな社やお堂にも、かつて救いを求めた人々によって納められた絵馬が、いまもひっそりと息づいています。

 この企画展では、安房地方の社寺や小さなお堂に残されている絵馬を紹介するなかから、人々が絵馬に託した願い、あるいは絵馬に映し出された風俗などをとおして、江戸時代以降の人々の生活を見つめてみたいと思います。

 なお、本展の開催にあたり、多くの方々よりさまざまな情報をいただき、また所蔵者の方々には快く資料の出陳をご承諾いただきました。厚くお礼申し上げます。

 平成4年10月10日
館山市立博物館長 松田昌久