風景を描いたものや、縁起のよい初夢を描いたものなど画題は幅広い。生業に関しては漁業や舟運が圧倒的に多いが、漁業を描いた絵馬は、当時の漁撈活動を知る上で貴重なものである。鴨川市白滝山不動教会の「白子村地曳網漁干鰯製造図」(図版44)には、一方の曳き網を岡者に持たせ、舟で沖に漕ぎ出して投網し、他方の曳き網を岸辺まで曳き帰る、片手廻し漁法が描かれている。丸山町安馬谷の八幡神社には「三嶋浦地曳網漁図」(図版45)があり、かつては地曳網が盛んであったことがわかる。また、大正10年に南三原まで開通したばかりの鉄道も描かれている。