安房地方の大絵馬の画題として最も多く見られるのが、このジャンルの作品である。祈願の内容は奉納者により様々であるが、源義経や日蓮・加藤清正などの歴史上の人物、合戦などの出来事、中国の故事に基づく題材が多く見られる。また天岩戸や、八岐大蛇退治、あるいは神功皇后と武内宿禰などの、よく知られた神話も題材として描かれている。館山市国分寺の「孝子伴直家主図」(図版61)は、『続日本後紀』に平安時代の安房国安房郡の孝子として記載される伴直家主を描いたもので、父母の死後も霊屋に像を安置し供養する姿を描いている。