館山市が主体的に観光を中心としたまちづくりを宣言したのは昭和31年のことでした。以来40年が経過していますが、館山が人々の休養地となってからの歴史は、すでに100年をこえています。
そもそも気候の温暖な安房地方には、もともと江戸時代から社寺参詣に訪れる人々に加え、絵師や漢詩人などのように、創作の題材を求めたり土地の人々との交流を求める文人たちなども数多く訪れていました。
明治時代になると、その文人来房と同様に安房にテーマを求めてきた画家や作家に加え、汽船の就航とともに余暇を過ごす来房者や療養のための来住者が姿を見せるようになります。やがて水泳教練の学生たちが訪れはじめ、大正時代に鉄道が開通すると、夏の短い余暇を海水浴で楽しむ人々がさらに急増していきました。
こうして館山を訪れる人々が増えると、そうした人々との交流のなかで、郷土を観光地として意識し、新しい産業としての「観光」を中心にまちを発展させるようになっていきます。
今回の企画展では、そうした観光都市としての館山の歴史を紹介しました。どのようにして館山が観光地になっていったのか。この企画展が、現在の観光都市館山のルーツを探る機会となり、私たちの住むまちの再認識の場となれば幸いです。
なお、本展の開催にあたり、多くの方々よりさまざまな情報をいただき、また貴重な資料をご出品いただきました。ご協力を賜わりました皆様に、厚くお礼申しあげます。
平成9年10月18日
館山市立博物館長 松田昌久