亡父番作の遺言に随って犬塚信乃は村雨丸献上のため滸我(こが)にやって来ると、ただちに執権横堀在村を通じて、宝刀の件を申し出ました。
お召しを待つためいったん宿に戻った信乃でしたが、念のため村雨丸を確認したところ、鞘の中の刀身は全くの偽物にすり替えられていました。思い当たるのはあの舟でのことです。
そこへ城から使いがきたため、やむなく登城して紛失の事情を説明したのですが、信用されず敵方の間者ではと、怪しまれてしまいます。
捕まっては命がありません。信乃は白刃をかいくぐって、芳流閣の大屋根の上に逃れます。眼も眩(くら)むような屋根の上ですので誰も登ってきません。しばらくしてやって来たのは、成氏の不興をかって投獄されていた捕り物の達人、犬飼現八でした。
新版狂言外題尽 里見八献伝芳流閣の場
豊原国周画
芳流閣屋根上の犬塚信乃と犬飼現八
歌川豊国画