4.回外剰筆(かいがいじょうひつ) 楽屋裏話し 

 『南総里見八犬伝』の物語が完結したそのあとに、回外剰筆という編があります。馬琴は

 この編は、作者の意衷を述べて、もて惣跋(そうばつ)に代るものなり。そが中に本伝の遺漏を補うよしもこれあり。譬(たとえ)ば俗に言う、幕のうちなる戯房話説(がくやばなし)の類ならまし

と説明しています。

 感動的な28年間の執筆の苦労話の他に、『南総里見八犬伝』は馬琴が創作した話しであって、史実ではないことをもう一度述べて筆をおいています。

 里見八犬伝は架空(あだし)のことのみ。

 安房の富山の如きは、ところの人、今は是をトミサンと喚びなしたり。しかるを本伝にはトヤマとす。是らは雅俗今昔の差別あればなり。実録ならぬをあかすなり。

回外剰筆 第九輯巻之五十三下 大尾
回外剰筆
第九輯巻之五十三下 大尾