千葉県指定の有形文化財である那古寺観音堂は、現在、6年の歳月をかけての解体修理が進められています。江戸時代の建立から250年、大正末の修理からもおよそ80年を経ての大改修です。
那古観音は安房地方を代表する観音信仰の霊場として、古来より多くの人々の信仰を集め、また地域有力者の庇護を受けてきました。とくに戦国時代の里見氏からは安房支配の要として政治的な役割を与えられ、江戸時代には領主としての側面をもって、地域の歴史と大きく関わってきました。また観音霊場としても、坂東三十三観音札所の結願寺、安房国札三十四観音霊場の第一番札所として、多くの巡礼者が訪れてきた歴史があります。
江戸時代には那古寺を中心とした門前町もできあがり、1793年の記録では門前周辺だけでも、8軒の宿泊施設がありました。また、那古地区の祭礼は那古寺の祭礼として行なわれ、明治以降の那古地区の観光宣伝のなかでも那古寺が核に位置づけられるなど、那古寺と那古地区は一体となって歴史を歩んできています。
今回の企画展では、観音堂の平成大修理を機会に、那古寺の信仰と歴史を紹介するとともに、地域の歴史を考えていきたいと思います。
なお、本展の開催にあたりご後援をいただきました那古寺住職石川良泰様をはじめご協力を賜りました皆様に、厚くお礼申し上げます。
平成18年7月15日
館山市立博物館長 石野裕男