<安房国札観音霊場>

 江戸時代になると広域の巡礼ばかりでなく、地方でも広域巡礼を真似て「移し」と呼ばれる地域巡礼が盛んに行なわれるようになりました。観音・薬師・地蔵などの諸仏を巡る本尊巡礼や、弘法大師や円光大師などの高僧ゆかりの地を巡る祖師巡礼があります。安房地方でも江戸時代中期には国内の観音巡礼が行なわれていますが、慶長年間にはすでに成立していたとの見方もあります。これを国札観音といい、坂東札所の結願寺である那古寺がその第1番の札所となり、地域の人々の信仰を集めていました。那古寺が安房地域における観音信仰の核になっていたことがわかります。そして第33番札所は西長田村の杉本山観音院です。坂東札所が鎌倉の杉本寺から始まるのと順逆の対応をしているといえます。安房国札観音は丑年を縁年として本開帳しますが、午年の開帳がある点や札所を34か所とする点は秩父札所との共通性もみられます。

安房国札三十四か所
 1  那古寺 館山市那古
 2  新御堂 館山市亀ヶ原
 3  崖観音 館山市船形
 4  真勝寺 南房総市富浦町
 5  興禅寺 南房総市富浦町
 6  長谷寺 鋸南町勝山
 7  天寧寺 鋸南町下佐久間
 8  日本寺 鋸南町元名
 9  信福寺 鋸南町大帷子
 10 往生寺 鋸南町上佐久間
 11 金銅寺 鋸南町上佐久間
 12 福満寺 南房総市合戸
 13 長谷寺 南房総市下滝田
 14 神照寺 南房総市平久里中
 15 高照寺 南房総市山田
 16 石間寺 鴨川市下小原
 17 清澄寺 鴨川市清澄
 18 石見堂 鴨川市貝渚
 19 善門寺 南房総市和田町
 20 石堂寺 南房総市石堂
 21 智光寺 南房総市山名
 22 勧修院 南房総市上堀
 23 宝珠院 南房総市府中
 24 延命寺 南房総市本織 
 25 真野寺 南房総市久保
 26 小松寺 南房総市千倉町
 27 住吉寺 南房総市千倉町
 28 松野尾寺 館山市神余
 29 金蓮院 館山市犬石
 30 養老寺 館山市洲崎
 31 長福寺 館山市館山
 32 小網寺 館山市出野尾
 33 観音院 館山市西長田
 34 滝本堂 鴨川市平塚
番外 震災観音堂 館山市北条
番外 観音寺 鋸南町保田
番外 水月堂 鋸南町勝山
105.安房国札順路里程図 文化6年(1809)
105.安房国札順路里程図 文化6年(1809)
個人蔵
5.国札第一番那古寺御詠歌額 享保15年(1730)

5.国札第一番那古寺御詠歌額 享保15年(1730)
那古寺蔵

 この御詠歌額は坂東三十三番とともに一番とも書かれている。国札のことであるが、施主の長狭郡北小町村(鴨川市)の佐生勘兵衛は、国札観音すべてにこの御詠歌額を奉納した。この享保15年の御詠歌額は現在もその多くが残されている。

10.国札・西国・百観音結願奉納額 正徳3年(1713)

10.国札・西国・百観音結願奉納額 正徳3年(1713)
那古寺蔵

この銅製の額も長狭東条郷東村(鴨川市)の人々が奉納している。西国坂東秩父の百観音と弘法大師の霊跡を巡る四国八十八ヶ所、そして安房国札観音のそれぞれの巡礼を達成した記念である。20名の名が刻まれている。

104.国札観音御朱印幅  平成9年(1997)

104.国札観音御朱印幅  平成9年(1997)
個人蔵

114.房州三十四番観世音御詠歌
114.房州三十四番観世音御詠歌
当館蔵
116.安房国札所巡拝案内記     昭和12年(1937)
116.安房国札所巡拝案内記
    昭和12年(1937)
当館蔵
106.安房国卅四番開帳記念絵葉書

106.安房国卅四番開帳記念絵葉書
個人蔵