神仏への祈願や供養のために社寺で句会を催し、額や行灯に作品を書いて奉納することも行なわれました。奉額・奉灯と呼ばれ、多くの人の目に触れることから、月次句合の興行として行なわれ、たくさんの句が応募されてきました。それらは撰者によって選ばれ、高点の秀句が掲載されることで、投句者の名誉欲をくすぐりました。
31.房州天津龍神宮奉灯月並会引札
鈴木孝雄氏蔵
北条村の絵師渡辺雲洋が、安西谷水の地元東長田村の山宮神社へ奉納する額に入れる画を依頼されていたが、大工からの額の仕上がりが遅れ、期日に遅延しそうな様子を伝えている。
小原村(館山市)の山根路行が主催となって大井村(館山市)手力雄神社へ奉納した額。那古村(館山市)の田村菱湾・宮本村(富浦町)の平島占魁・北条村(館山市)の盛岡木鵞・小戸村(丸山町)の牧野菊由など安房地方南部の中心的な俳人が名を連ねている。縁には後藤流の竜の彫り物がめぐらされ、北条村の絵師渡辺雲洋の梅の図を添えて、有力宗匠の歳旦句を集め2月に奉納されている。
布良(館山市)の布良崎神社の例祭にあわせて行なわれた奉灯句会で、1420の作品を集め、京都の花の本聴秋宗匠と東京の雪中庵雀志宗匠によって選ばれた秀句を書き上げた一覧表。館山・北条・那古・船形・館野・九重・豊田・千歳・千倉・白浜・豊房・神戸、そして地元富崎の一般の俳句を嗜む人たちが参加している。