様々な情報を内包する資料として、絵図に対する関心が近年とみに高まり、注目を集めているが、とくに近世の村絵図は各地に豊富に残されていることもあり、村落景観の復原など、地域史研究においてきわめて貴重な情報を提供している。
村絵図のなかにはひとつの村の景観を構成する様々な要素が描き表わされており、近世村落の景観を具体的に眼前によみがえらせてくれる資料なのである。下図のような様々な風景が色分けされて表示され、村絵図を片手に現地を歩いてみると、当時の村の景観が残っていることに気がつく。次頁のような風景もみることができる。もちろん変わったところも多い。とくに近年は景観の変貌にも著しいものがある。それ故にこそ村絵図をとおして近世の村の景観を思い描いてみるのも楽しい。この企画展をとおして村絵図を読む楽しさにふれてもらうとともに、本書を手に現地を歩くことをぜひお勧めしたい。そこには厳然として残る景観、消え去った景観、新たに生み出された景観がある。身近なところに村の歴史があることを鮮明に理解できるはずである。
なお、ここにいう村絵図とは、近世村絵図の表現方式、作成概念を踏襲する明治初期の村絵図を含めて取り扱っていることをあらかじめおことわりしておく。
街道
館山市船形
村境の六地蔵
館山市湊
高札場跡
(今も掲示場として利用される)
館山市笠名
郷蔵跡
(現在は集会所)
館山市宝貝
共同井戸
館山市神余
庚申塚
館山市大戸