(5)千手院(安東) 

 安東周辺は中世に安東郷と称され、数多くの中世の文化遺産が残されている地域ですが、なかでも千手院は石造の文化財がきわめて多く伝えられています。千手院は尾根の先端に穿たれたヤグラを墳墓堂として成立したものと考えられます。ヤグラの内部には石造千手観音坐像を本尊に、文和2年(1353)の銘がある石造地蔵菩薩坐像、己亥銘(天文8年とする説が有力)のある中世の日待供養塔などがみられ、境内地の岩壁にも五輪塔を浮彫りにした小規模なヤグラがみられます。またヤグラの真上にあたる位置には南北朝期と思われる関東型式の本格的な宝篋印塔もありますが、被葬者についてはまだ判然とせず、豪族安東氏一族の可能性が指摘されているのみです。宝篋印塔と文和2年の地蔵像は市の指定文化財です。

◇交通 日東バス千倉行安東下車徒歩2分