水は私たちの生活にとって大切な存在です。特に、米や野菜といった作物を作るためには欠かせません。現在のように水道設備が整っていない時代は雨水に頼る割合が高かったため、長期間雨が降らず旱魃(かんばつ)がおこれば凶作となり、飢饉に直結しました。
安房地方は、標高の高い山が少なく、また海に囲まれた半島であるため、山から海への距離が短く広大な河川がありません(現在、安房地方の上水道は整備されたとはいえ、遠く離れた千葉県北部を流れる利根川の水も利用しています)。田畑に必要な水を必要な時期に確保することは難しく、作物の実りを多くするために水を少しでも自分の田畑に引き入れようと、個人や、時には村どうしで「水争い」が起こったほどです。水争いは裁判になることもあり、その結末を記した裁許状や裁許絵図が残されています。
2.田方旱損虫付ニ付米症不正之儀御憐憫方願一札
嘉永元年(1848)
館山市立博物館