(3)伝承されるかっこ舞―獅子頭とかっこの道具―

 田村勇氏によると、南房総の三匹獅子舞の伝承地は、長狭街道沿いに伝承されている大山を中心とした系統(東端の鴨川地区一帯と西端の保田地区一帯)、富山を中心に伝承されている系統、館山市の洲崎神社や安房神社の信仰圏一帯に伝えられている系統の3つに分けられます。ただし、館山市の見物・浜田や南房総市の多田良は洲崎神社との関わりをとおして長狭の大山神社につながると考えられています。

 長狭の大山と富山は修験が活躍した山岳信仰の盛んな山です。また、各地の真言宗の寺(修験寺を含む)が別当を務めていることが多く、修験は地域の行事や祭礼と密接なつながりを持っていました。

 安房地方は現在6ヶ所の地区でかっこ舞をおこなっています(平成22年12月31日現在)。かっこ舞は地区の祭礼で奉納されるほか、雨が降らない日が続くと雨を呼ぶために臨時で踊るものでした。ほかのどの雨乞い習俗よりも効果があるとされてきたそうです。しかし、灌漑設備の充実などによって水に困窮することが少なくなったこともあってか、雨乞いのために踊る色合いは徐々に薄れてきました。

 近年では児童や若者の減少で、行列や演目の省略など内容を変更するだけでなく、かっこ舞の奉納・披露を中断せざるをえない状況がみられます。しかし一方で、中断したかっこ舞を復活させ地域の芸能として定着した例もあります。現在、安房地方に残るかっこ舞の多くは県や市や町の無形民俗文化財に指定され、従来の雨乞いや祭礼の場を越えて、県内外のイベントに参加するなど活動の場を広げています。