市井原の獅子舞・神楽舞は市井原八幡神社の例祭に奉納されます。八幡神社の例祭は、かつては8月15日におこなわれていましたが、明治時代に月おくれの9月15日に変更されました。今日では、祭典はこの日におこないますが、獅子舞・神楽舞の奉納は9月15日に近い土曜日におこなっています。
頭に黒塗りの獅子頭をかぶり、腹に鞨鼓をつけた3頭の獅子が笛や太鼓や囃子唄に合わせて雨乞いを祈願します。市井原ではこの踊りを、「獅子舞」と呼んでいます。かつては地区の祭礼の際に奉納する他にも、雨乞いのために地区内の山にある小祠で踊っていました。
昭和初期頃までは六尺棒やクサリ鎌による棒術も奉納されていましたが、戦争によって伝承が途絶えました。獅子舞・神楽舞は明治5年(1872)に一時途絶え、大正2年(1913)に復活した後さらに中断し、戦後再興され今に至ります。
<貰い水と獅子舞>
市井原では旱天(かんてん)が続くと、高宕(たかご)山頂(富津市・君津市)に霊水を貰いに行く風習がありました。若者を走らせてその水を汲み、竹筒に入れて息をきって急ぎ持ち帰り、持ち帰った水は神社に供えた後、渕に注ぎ、集落内の山に登り獅子舞を奉納しました。昭和20年(1945)にもこの貰い水をおこなった記録が残っています。佐久間ダム建設の時も、貰い水をして獅子舞を奉じ、一晩で水が溜まったといわれています。