5.館山市布沼(めぬま)

 館山市神戸地区の布沼では戦前、8月10日から3日間、氏神である厳島神社の例祭でかっこ舞が演じられました。古野清人氏の調査によると、3人のかっこが舞い、4人の子どもが5色の色紙を垂らした笠をかぶってささらをすり鳴らしていたようです。雨乞いの踊りであり、旱魃の時には臨時で演じることもあったようです。茂名区の明細帳<【2】(1)水への信仰と雨乞い参照>に記されていた近隣5ヶ村が、布沼の大石弁天でおこなったとされる雨乞祭で、このかっこ舞が踊られた可能性もあります。残念ながら現在踊りの伝承は残っていません。

 獅子頭およびかっこ舞の道具は布沼の菊井家に残されていました。菊井家は近世初頭までこの地を支配した里見一族の末裔です。同家の伝承によると、菊井家が管理する薬師様で病気払いのためにおこなったのが、かっこ舞のはじまりだとされています。

31-1.獅子頭 享保7年(1722年) 館山市・菊井義朝氏
31-1.獅子頭 享保7年(1722)
館山市・菊井義朝氏