3.標高20mにある縄文時代の浅瀬-沼サンゴ層

 北緯35度に位置する館山市は、現代の世界に生息する造礁(ぞうしょう)性サンゴ分布の最北限にあたりますが、約6,000年前に生息していたサンゴの化石を、現在の海岸より約1km内陸にはいった標高20mほどの位置にある館山市沼で観察することができます。沼面群の沼Ⅰ面にあたるその地点は、千葉県の天然記念物に指定されています。

 今までもお話してきたとおり、約6,000年前の縄文時代前期、現在よりも温暖であった地球は両極地方の氷が溶け、いわゆる縄文海進により、海水面が上昇していました。このことは、当時の海岸線が今より高いところにあったことを示し、そこに生息していたサンゴが、その後の地震隆起によって、現在のような山腹で化石として見ることができるのです。

 館山市沼から産出した化石を中心に、その実態が研究されたため「沼サンゴ」とよばれ、それらの化石が出土する地層を「沼層」といいます。沼層の造礁性サンゴ化石は、房総各地に広く見られ、現在75種が確認されていますが、市内では沼のほか、豊房(とよふさ)地区の南条や、西岬(にしざき)地区の香(こうやつ)などでも沼層をみることができます。

 館山市内では沼サンゴがみつかる地層が、標高20mの高所にあることからも、この地域が大地震のたびに隆起していることを知ることができます。

昭和42年(1967)
発掘された当時の沼サンゴ層(3枚とも)