わたしたちが住む安房地方は、海に囲まれた海の国です。半島の先端は、かつて海を介してさまざまな地域と交流をしてきました。半島には海の駅ともいうべき湊があり、そこに人・物・情報そして富が集まり、権力がうみだされました。安房の権力は湊とともに存在していました。それが安房の歴史的な特性だったといえます。安房では海上を主要な交通路にして、海とともに歴史が展開してきているのです。
とりわけ、鏡ヶ浦とよばれる館山湾がもつ歴史的な役割には大きなものがありました。歴史上、館山平野に安房地方の政治の中心地が集中しているのは、鏡ヶ浦があるからだといえるでしょう。
かつて鏡ヶ浦には多くの人々が行き交い、周辺地域の人々の生活もさまざまなかたちでつながりをもっていました。
現在鏡ヶ浦では、ビーチ利用促進モデル事業が進められ、さらに館山港が特定地域振興重要港湾に選定されるなど、新たな注目を集めてきています。また館山市では、平成13年度を初年度として策定された館山市総合計画で、「館山新世紀発展プラン」のなかで「交流・交易のまちづくりと館山湾の活用」と位置付け、海辺のまちづくりを進めていくようになっています。
そこで今回の企画展では、わたしたちが住む地域が、海を介してさまざまな地域と交流をしてきた歴史と、海とともに展開してきた歴史を、鏡ヶ浦の周辺から見つめ、館山市の歴史のなかで果たした鏡ヶ浦の役割を考えてみたいと思います。
なお、本展の開催にあたり、多くの方々よりさまざまな情報をいただき、また貴重な資料をご出品いただきました。ご協力を賜りました皆様に、厚くお礼申し上げます。
平成14年2月9日
館山市立博物館長 吉田信明