人々が雨露をしのぐ家屋では、土地の風土、暮らし方、そして、伝統的な建築方法によって、いろいろな地方色を持っています。この地方の農山村の民家は、多くが山腹や山裾に立地し、集落は散村となっています。屋敷は広くなく建物の配置は、南向きに母屋を建て、左に馬屋をかねた物置や長屋門を、右に堆肥小屋を建てる、コの字型の屋敷構がよくみられます。
この家は、母屋の正面に炊場{たきば}が建てられていて、庭のまわりを建物がとりかこむかたちになっています。農家の庭は、汗を流す労働の場所です。秋になって刈りとった稲の脱穀や籾の乾燥などの農作業は、この庭でおこないます。