分棟型といって、母屋からカマドのある土間を切り離して別棟にし、2~3メートル離して、ローカと呼ぶ相の間でつなぐ民家は、県内では安房地方だけにみられるものとして有名です。
こうした、狭い敷地内に母屋以外の家屋が並びたつ屋敷構は、黒潮にそって、南西諸島から太平洋岸の地域に点在していますが、特に、母屋からカマドの棟を別にする理由は、カマドの火を穢すまいとする考え方や、すすなどの汚れ、火災、暑気を避けるためなど考えられます。採暖の必要がある所では、火所は居室内に置かれますが、暖地ではその必要がないため別棟とする傾向が強かったと考えられています。
復元した民家は、館山市畑にあり、江戸時代のはじめころ(17世紀)に建てられたと推定される、現存する民家としては、安房で最も古いとされます。別棟型民家の母屋として古様を示し、当初は母屋と炊事場が別々になっていましたが、後の改造で、ローカによって二棟をつなぐかたちになったと推定されています。復元にあったては、改造前の元禄のころの姿にもどしました。
指導 千葉大学工学部 大河直躬先生、丸山純先生
旧尾形家住宅(重要文化財)
丸山町石堂寺裏