養生

 医者がいるからといって安心して暮らせたわけではない。やはり大切なのは普段からの養生であった。山下村(南房総市)の医師山下玄門が著した『養生新語』でも、「飯は粗食をよしとし、躰は勤労を良しとす」るのが基本。何事も過度を慎んで、身の養生をしなければ天然の長寿は保たれないというのが結論である。

82.『養生新語』(嘉永3年)

82.『養生新語』(嘉永3年)
東京大学総合図書館蔵

83.薬喰之図

83.薬喰之図  
池田定明氏蔵

 左の図は猪の頭にかぶりつく男が描かれている。日本では四足の動物の肉は食べていなかったと思われがちだが、実は江戸の町には「山くじら」という看板を出す「ももんじ屋」という獣肉を売る店があった。滋養や養生のためとして猪や鹿の肉を食べることがあり、これを薬喰いと称した。洲崎村(館山市)の医者どん池田家に伝来したもの。