我が国における埋蔵文化財調査は、土地開発の進展にともなって年々増加しています。これによって、古代史の通説を修正する新発見の報道が日常化し、古代史への関心が高まっています。
私たちの住む安房地方は房総半島南端に位置し、地形的に袋小路的な地理条件を持っており、『古語拾遺』の「房総開拓神話」によって示される古代交通路は黒潮の道~海上の道でした。また、大和政権と房総の交通は、相模から走水(浦賀水道)を経て上総に至るコースを主要幹線として行われました。大型古墳をもたない安房地方は、古代において神郡を有する安房神社を中心とした特殊な支配関係をもち、独特の文化を培ってきました。
今日まで土地開発がさほど進行していなかった安房地方も、今後リゾート開発などの大規模開発の波が押し寄せることが予想されます。今回、それに先立ち、明治以来積み重ねられてきた、安房地方における考古学研究の成果の一端を紹介することとしました。
この企画展が、安房地方の古代史に関心をもち、埋蔵文化財保護の必要性を理解する場となれば幸甚です。
なお、本展の開催にあたり、多くの方々から快く資料の出陳をご承諾いただきました。厚くお礼申し上げます。
平成2年10月20日
館山市立博物館長
松田昌久
環頭大刀把頭(館山市坂井翁作古墳) 古墳時代
滑石製模造品(白浜町小滝涼源寺遺跡) 古墳時代