日常生活に使う器物が美しく、そして、不朽のものであって欲しいという願望は、古来から我々の祖先が抱いてきたものである。縄文時代以降絶えることなく、人びとが漆と近い間柄にあったことは間違いのない事実で、最近の発掘成果により各地の中世の遺跡からも多くの漆器が出土している。
ところで、千葉県内の中世漆器の出土例は少ないが、下ノ坊遺跡から漆器皿が1点出土している。内面が朱漆塗り、外面が黒漆塗りのいわゆる内朱外黒とよばれているもので、漆絵などの文様は描かれてなく、普及品として使われたものである。そのほか、断片の接合に漆を使用した中世陶器片が2点出土しており、これは遺跡の近隣地域で漆生産が行われていた可能性を示すものである。
漆器皿(鋸南町下ノ坊遺跡)
財団法人千葉県教育振興財団提供
常滑捏鉢(鋸南町下ノ坊遺跡)
財団法人千葉県教育振興財団提供