標高23.7mにある館山市浜田の鉈切洞穴は、館山湾に面した海岸段丘に自然の営みでつくられた海蝕洞穴で、入口の高さは4.2m奥行きは36.8mと大きく、縄文時代には漁撈に従事した人びとが使用し、現在は、海神を祀る神社として信仰の対象となっている。
昭和31年の発掘調査により、魚を捕るための鹿角製釣針のほか、マダイやマグロなどの外洋種の魚骨や、アワビやサザエなどの岩礁性の巻き貝などが出土している。これらの遺物は、海岸部での魚介類の採集にとどまらず、かなり沖合まで乗り出して漁をしていたことを物語っている。そのほか、シカ、イノシシ、イルカなどの哺乳類や、海鳥などの骨がみつかっており、遺跡の立地条件をよく示している。
鉈切洞穴内部
釣針・ヤス・銛(館山市鉈切洞穴) 縄文時代
魚骨(館山市鉈切洞穴) 縄文時代
シカ骨・イルカ骨(館山市鉈切洞穴) 縄文時代
貝類(館山市鉈切洞穴) 縄文時代
(以上、千葉県立安房博物館蔵)