日本人はいかなるものに神聖感を感じ、どのような景観のなかに神を見てきたのでしょうか。しかるべき「風景」を眺め、ある「場」に臨んだとき、ふと身震いし謹んだ気持ちになって身を正すことがあります。古代人は、聖なるものに対する反応がはるかに鋭かったのかもしれません。
「神々の風景」は、そうした古代的な精神のありかたによって直感的に選ばれ、守り続けられてきたものといえます。自らの生活空間のなかから神聖感の強い場を選んで神々の場と定め、ムラびとたちはそこに安らぎを求めました。しかし、ある一定の地形であればすべて「聖」というわけではありません。ここでは神座になりうる地形を想定するのではなく、日本人が古来聖域として守り続けてきた地形の一端を、関東地方とその周辺の古代祭祀遺跡から探っていきます。そこから、日本人の魂の安らぐ原風景、あるいは郷愁を誘う景観がみえてくるかもしれません。