伊興遺跡-東京都足立区- ムラザトの神まつり

 足立区は東京東部低地の一画にあり、たくさんの川が流れています。その流れにより上流の土砂が下流に堆積(たいせき)し、新しい土地がつくりだされました。このような沖積(ちゅうせき)地には、少し高い所と低い所が複雑に入り組み、高い所は低地に住む人々にとって、生活の場所として選ばれました。古墳時代になると、周囲の台地で大規模なムラが各所に営まれ、そうした社会の動きのなかで、低地部の伊興(いこう)でも大集落が定着したと考えられています。この伊興のムラが一番大きくなったのが、5世紀中頃と考えられています。なぜなら土師器(はじき)や漁業に使われた土錘(どすい)のほか、祭祀(さいし)遺物が大量に土出しているからです。

 神まつりの道具には、臼玉(うすだま)・剣形・有孔円板(ゆうこうえんばん)などの石製模造品や、鏡形や玉類などの土製模造品のほか、糸をつむぐときのはずみ車である紡錘車(ほうすいしゃ)や子持勾玉(こもちまがたま)があります。また小型の粗造銅鏡がありますが、実物を使っているだけに、その時のまつりが重く考えられていたのかもしれません。まつりの目的については、水上交通に関するものという説や、洪水がないように祈ったなどの諸説がありますが、このムラが何か重要な役割を果たしていたことだけは確かです。

古代の神まつりのようす

古代の神まつりのようす
(足立区立郷土博物館提供)

10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物  石製模造品
10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物  石製模造品
10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物

10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物
  玉類・土製模造品(玉類)

10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物

10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物
  子持勾玉

10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物

10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物
  捩文鏡(右)と重圈文鏡(左)

10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物

10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物
  紡錘車

10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物
10.東京都足立区伊興遺跡出土遺物
  土製模造品(鏡形)と珠文鏡

(以上:足立区立郷土博物館蔵)