現在、伊豆半島南端の賀茂(かも)郡では11の祭祀遺跡が確認され、集落内の祭祀と、岬や小島などの海の祭祀に大別できますが、洗田の神まつりは、それらとは性格が異なるものです。
下田市吉佐美(きさみ)から、賀茂郡南伊豆町に向かう国道沿いに、御倉(みくら)山と呼ばれる美しい円錐(えんすい)形をした典型的な神奈備(かんなび)型の山があります。この山の東側山麗の水田地帯の一角には、洗田(せんだ)と呼ばれる小さな丘陵があります。
ここで、昭和12年から翌年にかけて、2回の発掘調査がおこなわれ、丘陵の頂付近から多量の祭祀遺物が出土しました。そのうち代表的なものは、剣形・勾玉(まがたま)形・有孔円板(ゆうこうえんばん)などの石製模造品や、土製模造品(勾玉形・鏡形・丸玉形)などです。このほか青銅製鏡や、手捏(てづくね)土器と呼ばれる小型の手びねり土器が多数発見され、神まつりが行われた時期は、5世紀代から6世紀代にかけてと考えられています。
今でもこの遺跡に立つと、水田を隔てた向こうに御倉山を望め、古代の人々が降臨する神々を祀った姿がしのばれるようです。
9.静岡県下田市洗田遺跡出土遺物
土製模造品
9.静岡県下田市洗田遺跡出土遺物
端花双鳥八菱鏡と石製模造品
(以上、國學院大學考古資料館蔵)