洲崎(すのさき)踊り

 館山市洲崎(すのさき)の洲崎神社に伝承されるこの踊りは、2月の初午と8月の神社例祭に奉納されています。踊りは、念仏踊りの系譜をひく「弥勒(みろく)踊り」と、悪霊払いを目的とする「鹿島踊り」の2種類からなり、ともに海の安全を司(つかさど)る鹿島の神に関係しています。洲崎の突き出た岬は、東京湾と太平洋を分け、海上交通の要地として知られてきました。漁民たちの洲崎神社への信仰は大変篤(あつ)く、戦前には湾から出る船は米と金を、漁の帰りの船は魚をおいていくことが常だったといいます。洲崎神社の存在は、大規模な漁業経営が難しい磯浜のムラにとって、弥勒踊りの歌詞にあるように、海の彼方から富をもたらしてくれる拠り所だったのかもしれません。

洲崎踊り