2.神々に捧げられた工芸品~古神宝

 神宝(しんぽう)とは神社に伝わる社宝のことをいうのではなく、神の日常生活の用具としてつくられ、神の坐(ましま)す社殿内に納められた貴重な宝物のことをいい、いずれも神々に捧げられたものです。

 神宝のはじまりは、古代の史書である『先代旧事本紀』(せんだいくじほんぎ)によると、饒速日命(にぎはやひのみこと)が高天原(たかまがはら)から降臨された際にもたらされた「十種神宝」(とくさのかんだから)とされています。十種の内容は、多種多様なはたらきをもつとされる、鏡・剣・玉・比礼(ひれ)にわけられます。このうち比礼は、幡に似た「まじないもの」といわれ、『令集解』(りょうのしゅうげ)には神祇官が鎮魂(たましずめ)の行事の時、これを振り動かして呪術的なまじないを行ったとされているので、その用途を知ることができます。またさきの『先代旧事本紀』には、困ったことや病気などで邪気をはらおうとする時には、『十種神宝』の名を唱えながら、これらの品々を振り動かせば、願意がかなうとされています。それぞれに霊力を持たせているところに、古代祭祀における神宝の姿をみることができます。そして今日、神社の御神体に神の依代(よりしろ)として、鏡とか剣、あるいは玉が祀られることが多いのは、このような宗教的な意義が継承されているものと考えられます。

 このように古代祭祀の神宝は、地域社会での霊力を秘め、その種類は極めて少ないのですが、奈良・平安時代になり、社殿が整備されはじめると、神宝は金工や漆芸その他高度な技術を駆使してつくられようになります。武具のほか、衣装や装身具、化粧道具など内容も多岐にわたります。神社の社殿造替(ぞうたい)遷座や重要な祭事が行われる時には、すべての神宝が、形態も製作技法も伝統にしたがって新調されました。そして役目を終えると、社殿から下げられて土中に埋納され、あるいは別置されて、現在に至っています。

 ここでは、武の神として長い歴史がある佐原市の香取神宮と、館山市安房神社の古神宝を紹介します。

3-1.〇香取神宮古神宝類

3-1.〇香取神宮古神宝類 
  伯牙弾琴鏡

3-2.〇香取神宮古神宝類

3-2.〇香取神宮古神宝類 
  盾形鉄製品

3-5.〇香取神宮古神宝類 
3-5.〇香取神宮古神宝類 
  黒漆菊紋様蒔絵手筥
3-3・4.〇香取神宮古神宝類

3-3・4.〇香取神宮古神宝類 
 銅製供器(鋺形)・鉄製供器(脚付円盤)

3-6.香取神宮古神宝類
3-6.香取神宮古神宝類   櫛

(以上、佐原市香取神宮蔵)