古代から現代まで、神まつりや寺での信迎にあるいは祭りや芸能に使われてきたのが「鈴の音」です。この音の背景には、「いのり」や「ねがい」「おもい」といったものがこめられていました。そして古代の人々は、鈴の音を介して神と出会い、音をとおして神の声を聞くことができたようです。しかし現代の私たちは、このような音を聞く術(すべ)をなくしてしまったのかもしれません。土鈴を聞いても、ただゴロゴロという音しか聞こえません。ましてや、館山市つとるば遺跡の土でつくった鈴や鐸からどのような音がイメージできるでしょうか。
ところで古墳(こふん)時代の5世紀には、大陸から多くの金属製品が入ってきて、それを模倣(もほう)した馬具(ばぐ)とともに、多くの鳴るものが出現しました。その影響で、鏡に鈴を付けることがおこなわれたようです。鈴鏡については埴輪(はにわ) (参照)から、それを巫女(みこ)が持ったことが窺(うかが)えますので、その性格は自(おの)ずとわかります。
大陸の影響を受けた「鈴の音」は、多くが古墳から出土しており、権威(けんい)の音ともいえますが、いつの頃からか神の使いとして巫女が持つようになったものなのでしょう。
35.人物埴輪(鈴鏡を下げた巫女)
埼玉県行田市稲荷山古墳
(現蔵:埼玉県立さきたま史跡の博物館)