5世紀から6世紀にかけて、石製模造品の使用が全国的に流行したことは先に述べましたが、どのようなルートで伝播(でんぱ)したのでしょうか。まず分布をみると、鏡形品は山形県から徳島県までひろがり、円板や勾玉(まがたま)形・剣形品は宮城県から佐賀県でみつかっていますが、地域的には濃淡があり、東北・関東・中部に多く拡(ひろ)がっていることがわかります。石製模造品は、4世紀を中心とした碧玉(へきぎょく)製石製品の影響を受け発生したという指摘がありますので、畿内から中部を経由して関東、東北へと伝わってきたことが想定されます。
この時期の東北の代表的な祭祀(さいし)遺跡が、福島県南部にある建鉾(たけほこ)山遺跡で、神奈備(かんなび)型の建鉾山を信迎の対象としています。ここからは膨大(ぼうだい)な量の石製模造品(鏡・鎌・刀子・剣・有孔円板(ゆうこうえんばん)等)や、青銅製鏡、土製模造品などが出土していて、全国でもゆびおりの山を対象とする祭祀遺跡です。まつりの時期は5世紀の中頃と考えられていますので、流行の伝播がいかに速かったか窺(うかが)えます。
14.福島県西白河郡表郷村建鉾山遺跡出土遺物
手捏土器
國學院大學考古学資料館