おわりに -今後の展望を考える-

 まず土製模造品について、何を模したかということはわかっても、どう使われたのかという点について推測の域をでません。これらを使い、擬態(ぎたい)を演じながらまつりがおこなわれたという指摘もありますが、さらに多数の資料の蓄積がなされなければ、その実態に迫りえないといえます。そして、とくに鐸鈴のまつりは館山市つとるば遺跡で確認されているだけですので、安房である程度普遍的であったのか、あるいは一集団に限定されていたのか検討する必要があります。
 安房の古墳時代を特徴づけるものは、墓として使われた海蝕(かいしょく)洞穴、土製模造品使用の神まつり、高塚古墳の少なさなどですが、これらは極めて地方色の強いものです。今後この強い地方色がどのような歴史的背景のもとに形成されてきたものか、検討していく必要があります。そのためには安房の文化構造の全体系を、より多くの考古資料と歴史的事実の総合に基づいて、解明していかなければなりません。