この土器は集落を一望できる高台で発見され、埋もれていた柱状石を取り除いた際、この石の影にかくれるような場所から、朱(しゅ)塗りの土師器高坏(はじきたかつき)や坩(かん)などとともに出土したといわれています。顔面から受ける印象はわずかに笑みをうかべているようで、目と口は土器の壁をくり抜き、表現されています。顔面の左右には耳がつけられ、耳たぶには孔があけられています。挙(あ)げられた手は、内側を向いていて指を表現する刻み目がつけられています。
一部に朱塗りの跡があり、かつては赤色に塗られていたのでしょう。挙手(きょしゅ)の意味には、豊かな稔(みの)りへの喜びを表現するという説や、この土器を中心に高坏や坩を置き収穫感謝祭が行われたという説があります。6世紀の神まつりで使われたと考えられています。
15.拳手人面土師器
國學院大學考古学資料館蔵