はじめに

 本来、神は目に見えない存在で、「神がかり」という言葉があるように、神は人を畏れさせる威力をもち、呪力あるカリスマ的性格を持つものです。

 まだ神社がなかった頃には、どこの山とか、どこの森とか、ある特定の場所に神様が潜んでいると考えられ、その場所を中心に崇拝が始まりました。

 私たちの住む安房では、古墳時代後期の6世紀から7世紀にかけて、特殊な土製模造品を使った神祭りが行われています。そして、高塚古墳が少ない一方で、海蝕洞穴に有力豪族が埋葬されています。

 また、『古語拾遺』の「房総開拓神話」には、安房に忌部氏が集団移住したという伝承が記され、律令期には神郡を有する安房神社を中心とした祭祀集団が形成されています。

 そこで、今回の企画展「神々の風景―古代のカミへの捧げモノ」では、これらの考古学的、歴史的事実を前提に、神まつりに使われた土製模造品にスポットをあて、古代の安房で、一種独特な宗教文化が形成された背景を探ってみることにいたしました。

 陳列された資料から、神まつりをとらえ、古代の安房に想いをめぐらせていただければ幸いです。

 本企画展の開催にあたりまして、貴重な資料を御出品下さいました関係各位、並びにご指導ご協力を賜りました皆様に、深く感謝の気持ちを表したいと存じます。

 平成6年10月15日
館山市立博物館長 松田昌久