土製模造品の分布をみると、関東では南関東に集中する傾向があり、特に安房(あわ)に多いことはさきに述べたとおりです。さらに全国をみると、近畿地方をはさんで東西にある九州と関東に多くみられることが明らかになっています。また分布の多い地域でも関東の安房のように、特に集中するという傾向があります。
土製模造品は造形がしやすいので、石製模造品にはない鈴鏡(れいきょう)や鐸(たく)、武具類、機織(はたおり)具、人形(ひとがた)などがみられ、館山市つとるば遺跡の鈴鏡や鐸のように、特徴的なものが認められます。またそのまつりは継続的にはおこなわれていないという共通した現象があります。これらのことから祀られた神は、地域で霊威(れいい)ある神として意識されていたため、国家の統一が進む過程で神まつりの強制的な統合が行われていたという指摘がされていますが、安房の鐸鈴のまつりがどのようにおこなわれ、どのような文化交流のもとに形成されたものなのか探っていきます。